ワールド・ビジョン・ジャパン〜Professionals for Owners  オーナーを支えるプロフェッショナルたち〜

ワールド・ビジョン・ジャパン〜Professionals for Owners オーナーを支えるプロフェッショナルたち〜

金融

「すべての人に“何もかも”はできなくとも、誰かに“何か”はできる」

すべての子どもたちが豊かないのちを生きられる世界を目指し、世界約100カ国でグローバルな活動を展開する国際NGOワールド・ビジョン。
子どもの成長をマルチに支える総合的な地域支援事業「チャイルド・スポンサーシップ」は、国内でも5万人を超える継続的な参加者を集め、開発途上国で厳しい環境に生きる多くの子どもたちを支えてきました。
その設立経緯から活動内容、プロジェクト遂行の具体的な流れまで、
ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長の木内真理子さんに伺いました。

聞き手:芦田 敏之(税理士法人ネイチャー国際資産税 代表)

ワールド・ビジョンは、どのような団体なのでしょうか。

数多くある子ども支援の団体の中でも、いわば、総合商社のような団体だとイメージしていただけるとよいのかもしれません。
地域の貧困問題の解決をじっくり目指す「開発援助」、災害や紛争時の「緊急人道支援」、さらに、問題の根本的解決のために、政府や市民・社会に働きかけて政策提言を行う「アドボカシー」を三本柱に、多岐にわたる活動を世界約100カ国で展開しています。

なるほど。子どもたちのために何でも取り組む、ということですね。団体の成り立ちを教えてください。

ワールド・ビジョンが始まったのは、1950年。
アジアを訪問中だったアメリカ人宣教師のボブ・ピアスが、第二次世界大戦から朝鮮戦争へと向かう混乱の中で、多くの子どもたちが悲惨な状況で生き延びている現実を目の当たりにしたことがきっかけでした。
中国で一人の女の子に出会った彼は、ポケットに残っていたお金を施設に渡し、女の子を託そうとするのですが、親を亡くした子どもであふれていたこの時代。
すでに多くの子どもたちでいっぱいだったこの施設の施設長から「これだけのお金でずっと育てられるわけではない」と言われ、継続的な支援の必要性を理解し、送金を続ける約束をしたのです。

米国へ帰国後、もっと多くの子どもたちに支援を届けるために設立されたのがワールド・ビジョンです。
キリスト教精神に基づき、すべての子どもたちが健やかに成長し、”豊かないのち“を生きられる世界を目指すことをビジョンに、活動しています。

“豊かないのち“とは?

子どもが心身健やかに成長するのはもちろんなのですが、自分のポテンシャルを開花させる希望を持って生きられる、ということですね。

大きなビジョンですね。

そうですね。貧困、災害、紛争。世界の問題は複雑に絡み合っていて、すべての問題の解決は容易ではありませんが、創立者ボブ・ピアスの「すべての人に“何もかも”はできなくとも、誰かに“何か”はできる」という言葉が、私たちスタッフの心の支えになっていると思います。

具体的には、どのような活動を行っているのですか。

子どもが成長するためには、ハード面もソフト面も含めて、実にさまざまなものが必要ですよね。

衣食住はもちろん、教育、衛生環境、医療、親や周囲からの愛情、働く場などをトータルで整えていくことが不可欠です。
そのトータルなニーズに応えていくために、活動の核としているのが、「チャイルド・スポンサーシップ」です。

チャイルド・スポンサーになってくださった方には、支援する地域に住む子ども“チャイルド”をご紹介し、文通や訪問などで交流していただくことができます。
月々4,500円のご支援(寄付)をお願いさせていただくのですが、年に一度お届けする報告書は、チャイルドの個人的な成長と、ご寄付で可能となった活動の成果の両方がわかる内容となっています。

チャイルド・スポンサーシップは、一人の女の子の存在を大切にした創立者ボブ・ピアスの想いを継ぎ、人と人の繋がりを大切にした寄付プログラムですが、いただいた資金を一人の子どものためだけに使うわけではありません。

一人の子どもが健やかに成長できるためには、その子どもが暮らす地域全体の環境改善が必要ですから、お預かりする資金はチャイルドが暮らす地域全体の教育、水・衛生、保健、生計向上などを継続的に支援し、地域の貧困問題を解消していくために使わせていただきます。
地域全体の改善を目指した支援が、結果として、一人の子どもが健やかに成長できる環境の創出へとつながるのです。

支援するチャイルド・スポンサーと子どものつながりは一対一で育むけれど、支援の枠組みは大きく、地域全体を見渡す総合的な視野に立って運営されているビジネスモデル、ということですね。