ワールド・ビジョン・ジャパン〜Professionals for Owners  オーナーを支えるプロフェッショナルたち〜

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金融

アセスメントからトランジション(支援卒業)まで、
15年間をかけて地域を支援する

「チャイルド・スポンサーシップ」では、どのような流れで支援活動をされているのですか。

大きな特徴は、10~15年間という長い期間、一つの地域で支援を継続することだと思います。
長い。でも、いつかは終わるということを、支援が始まる最初に、支援地域に住む方々にお伝えし、終了までに、地域全体が子どもたちの成長にとってよい方向に変わっていることを活動のゴールとして、一緒に歩んでいくのです。
支援の成果が実り、子どもの成長にとって望ましい環境が地域の力で持続可能な状態になっていることが、目標になります。

例えば、フィリピンの支援をする場合は、ワールド・ビジョンの現地事務所と連携し、支援ニーズに関する情報を収集・整理します。
そのなかで問題を抱える地域を洗い出し、支援するエリアを選定し、事業を組み立てていきます。
最初の2、3年はアセスメント(調査)に徹し、地域コミュニティの人はどういうことに困っているのか、私たち外部の人間に本音を吐き出してもらうためには、まずは関係性づくりが重要です。
時間をかけて、少しずつ信頼関係を構築していきます。
同時に、さまざまな立場の人に話を聞きながら、立体的にその地域の全体像を描いていくことも重要になります。

こうして、コミュニティの人々とともに何が問題で、その問題に対してどうアプローチしたらいいかということを事業計画として策定したら、10年近くかけてそれを実行していきます。
実際は試行錯誤の連続で、やっては振り返り、計画通りに進まなければ立て直し…をくり返しながら、少しずつ前進していきます。
そして、最後の2年間あまりはトランジション(支援卒業)へ向けたステージ。
支援活動のエグジット(出口)に向けて取り組みます。
コミュニティが支援終了後も支援の成果を活かして歩んでいけるよう、組織作りや人材育成に力を入れながら、活動の引き継ぎを行います。

アセスメントとトランジション(支援卒業)の準備に多くの時間を費やすのはなぜですか。

代表の写真アセスメントでは地域に深く入り込んで課題を見出す必要があります。
支援を届ける地域コミュニティの人々の声を丁寧に集め、分析するとなると、それなりの時間がかかります。
また、トランジション(支援卒業)でも、コミュニティの人々に支援の成果を少しずつ引き継ぎながら、オーナーシップを育んでいくために、時間をかける必要があるのです。

途上国支援というと、学校を建設したり、井戸を作ったり、というハード建設系のイメージが浮かびやすいかもしれません。
もちろん、そうした支援も必要です。
でも、建設後の施設を、誰が、どういう仕組みで維持管理していくのかを整える必要があり、そのために一番重要なのは、その施設を実際に使う地域住民の「自分ごと」意識なのです。
いわゆるオーナーシップですね。施設を作るだけだったら数ヶ月で完了できるかもしれません。
でも、村で焼けるレンガは自分たちで準備する、建設に必要な労働力をボランティアで提供する、というような調整に時間がかかり、一見非効率と思えるプロセスを踏むことで、オーナーシップが高まり、いつまでも成果が持続する支援になっていくのです。

また、多くの開発途上国では、物事がスピーディーに進む日本とは時間の流れがまったく異なるという要因もあります。
今でこそ携帯電話などのツールも普及し始めていますが、それでも、例えばミーティングをするにしても、実際にミーティングに集まる人のところまでまず歩いて出かけて行って、伝達しながら調整する、ということはまだまだ日常的で、今日決めて明日やろうというわけにはいきません。
住民の時間に対する感覚自体ものんびりしていて、分刻みで行動するのがあたり前の日本人とは異なりますね。