国境なき医師団(1/4)〜Professionals for Owners  オーナーを支えるプロフェッショナルたち〜

国境なき医師団(1/4)〜Professionals for Owners オーナーを支えるプロフェッショナルたち〜

ライフ

「国境なき医師団」はいかにして誕生し、活動を続けてきたか

医療・人道援助活動を行う非営利の民間国際団体「国境なき医師団」。
1971年の設立以来、紛争や自然災害、貧困などによって命の危機に瀕している人々に緊急医療を提供してきました。
実は、その活動資金の95%は民間からの寄付により支えられています。
国境なき医師団の活動や理念、そして個人ができるサポートについて、
特定非営利活動法人国境なき医師団日本ファンドレイジング部ディレクターの吉田幸治さんに伺いました。

国境なき医師団の歴史についてお聞かせください。

国境なき医師団(MSF)は、1971年にフランスの医師とジャーナリストらにより設立されました。実は彼らは、その数年前、1967年にナイジェリアで勃発した独立戦争(ビアフラ内戦)に、赤十字のメンバーとして参加していました。もちろん、赤十字は素晴らしい活動をしているのですが、活動地の現状や意見を公にしたり、且つ同国の政府を非難した前例はありませんでした。ビアフラの市民に対するナイジェリア軍の横暴に対しても、何も言えません。そんな赤十字で活動する中で、彼らは、沈黙を守る赤十字での活動に限界を感じ、「我われが、もっと声を上げないといけない」と独立性が高く自由に活動ができる組織を立ち上げるに至ったのです。このような設立経緯があり、「中立・独立・公平」を原則とし、人種や政治、宗教にかかわらず医療・人道援助を提供することが、国境なき医師団の何よりの特徴になっています。その後、カンボジア、レバノン、アフガニスタン、エチオピア、スリランカ、リベリア…と多くの国と地域へと活動を広げ、1992年には日本事務局が発足。1999年にはノーベル平和賞を受賞しました。現在では世界各地に29の事務局を設置し、2016年は39,000人以上のスタッフが約70の国と地域で活動を行いました。国境なき医師団日本からも107人を派遣し、34の国と地域で活動しました。

国境なき医師団では、具体的にはどのような活動をされているのですか。大きくは「緊急医療援助活動」と「証言活動」の二つがあります。

「緊急医療援助活動」は、紛争、貧困や自然災害で命の危機に瀕した人びとに、無料の医療援助を提供する活動です。諸々の理由で医療を受けられない人々など対象は多岐にわたり、アフリカ、中東、アジア、南米などが主な活動地となります。加えて、世論に人々の苦境を訴える「証言活動」と、国や政府に対して政策提言をする「アドボカシー活動」も重視しています。設立の経緯でお話ししたように「沈黙は人を殺す」という事実を目の当たりにしてきた経験から、国境なき医師団が援助活動の現場で人権侵害や暴力行為、非人道的行為を目撃した場合には抗議の声を挙げ、解決を訴えています。例えば、2015年に、国境なき医師団がアフガニスタンで運営する病院が空爆を受け、患者・スタッフら42人が亡くなるという悲劇が起きました。シリア、イエメン、南スーダンなどの紛争地でも命を救う場所である病院が繰り返し攻撃の標的になっていました。このため、日本国内でも現状を訴え改善に向けた行動のため、「病院を撃つな!」キャンペーンを実施。日本政府に対し、あらゆる影響力を行使して医療施設への攻撃が常態化することがないよう求め、一般社会に署名を呼びかけたところ10万近い支援者の署名を集め、政府へ提出しました。また、製薬会社に対して、医薬品などの価格を下げるよう訴える「必須医薬品キャンペーン」も継続的に実施。途上国の“医療の壁”を撤廃するべく活動を続けています。

海外派遣スタッフはどのようにリクルートされるのですか。

現地で活動する派遣スタッフには、医師や看護師といった医療スタッフと医療サービスの提供を支える物流担当者、財務・人事担当者など非医療スタッフがいます。国境なき医師団では、各地で募集説明会を実施している他、ウェブサイトにも詳細情報を掲載し、現地で活動いただける方を通年募集しています。国境なき医師団の活動理念に賛同いただいた上で、専門スキルを生かせる方にご応募いただいています。現場では、日本からの派遣スタッフに加え、他国からの派遣スタッフ、現地採用のスタッフで構成される多国籍チームで活動するため、英語、またはフランス語でのコミュニケーション力も必須になります。命を救うという目的に向かって、チーム一丸となって活躍できるスタッフを日本でも募集しています。

応募者は、国境なき医師団事務局での書類選考、個別面談を経て、登録されます。その後プログラムを運営しているオペレーションセンターと派遣地・時期を調整し、派遣が決定されます。派遣先の半分以上が紛争中もしくは政情が不安定なエリアですが、派遣前の準備研修で必要な情報を学ぶことができます。不安がある地域への派遣を打診された場合は断ることもできます。手当てと諸費用は国境なき医師団が負担し、月額16万円程度の給与も支払われます。国境なき医師団という名前から「医師のみ」と思われることが多いのですが、プロジェクト責任者、物流、通信や安全を管理するロジスティシャン、人事や財務などを担当するノンメディカルスタッフもいます。プロジェクトは海外からの派遣スタッフと現地採用スタッフが凡そ1:9で構成されます。現地スタッフと一緒に働くことで、スキル移転が可能になるとともに、雇用を創出できます。

聞き手:芦田 敏之(税理士法人ネイチャー国際資産税 代表)

To be continued…